王国逸話

むかーしむかし、あるところに、文字のない王国がありました。
老いた王様はとっても雄弁で、いつも民衆を大広場に集めては、みんなに生きる勇気を与えるまぁまぁ良い国でした。

ある日二番目の王子が旅から帰ってきました。
王子はひかりの国から、新しい文化を持って帰ってきました。

「じゃがいも」、「鉄」、「リュート(楽器ね)」そして「文字」

「じゃがいも」にも「鉄」にも、民衆はその美味しさと便利さに大喜びしました。
リュート」のおかげで祭りのお囃子がさらに楽しいものになりました。
だけど民衆は「文字」の便利さ・大事さをすぐには理解できません。
でも賢い王子は、そこで焦りませんでした。まず、「学校」と「写判所」を作って、民衆に「文字」を教え、文字の写した「紙」をたくさん作らせたのです。

しばらくして、ことの大事さを知ったのは王さまです。
王さまはプンスカ、ムフムフ、ものすごく激怒しました。
『わしにしか語れなかった言葉、演説の内容を、その「文字」とやらにに変えてしまったら、盗人に持って帰られてしまうではないか!』
『わしと民の大切な言葉を、盗まれたら、どうしてくれよう!』

そうです、文字のない王国ではだいじな言葉は王室お抱えの「語り部」達が、その特異な記憶力で一語一句忘れずに覚えている、というシステムだったのです。
一方「文字」を書いたものは誰だって持てるものですから、王様の言葉はいつ盗まれるかわかりません

『ですが、王さま!』
王子は文字のイノベーションについて語ろうとします。
『えぇい、この親不孝者の、反逆者め、ピシピシ。』

王様は、怒って我が子を城の牢屋に閉じ込めてしまいます。
王様は王国での「文字」の使用を厳しっく禁止しました。

3ヵ月後、王様は王子にもうしひらきのチャンスを与えることにしました。

『どうだ、お前も少しはわかってくれたか?』
王様は言います。

かつての気品ある面影もなくガリガリにやつれてしまった王子は言います。
『いいえ、王様、わたくしの思いは変わりません。どうかお聞きください。私は15人の供の者をつれて、ひかりの国にまいりました。そこで私は新しい文化を手に入れました。』
王子は立ち上がります。
『まず「じゃがいも」のために5人、次に「鉄」のために5人、ただの楽器である「リュード」のために3人、供の者が犠牲になりました。』
『すべてはひかりの国の者達のしわざでした。新しいものを得るにはリスクがあったのです。』

いつのまにか、王様と王子は大広場で話していました。なんだなんだと、ぞろぞろと民衆が集まってきます。
王様は深い皺の刻んだ顔で、黙っています。
王子はなおも続けます。

『ですが、彼らは「文字」については何もしませんでした。私たちがそれに関する技術を奪うということに対して、まったく構わないようでした。むしろ、彼らの中には私達に親切に「文字」を教えてくれる者さえいました。』

『オーーー』
いつの間にか集まった民衆がどよめきます。

王様は王子を許せませんでした
『シェー!許せぬ、こやつを地下牢に入れよ!』

ボンボン育ちの王子が地下牢で耐えられるワケがありません、ひと月後に王子は亡くなりました。
それでも王様は、気にせず、王国の治世にはげみました。

ところが、困ったことが起きていました。
国中に禁止していたはずの「文字」が氾濫してきたのです。
豆腐屋さんの看板、お肉屋さんの値段プレート、人探しの掲示板 etc. etc.
そうです。王子は亡くなりましたが、王子の意志は生き続けていたのです。
今では小さな子供でも「文字」をつかっていたずらをしたりします。
人々は文字の便利さを理解したのです。

それでも王様は「文字」を認めませんでした。
悲しいですが、王国は衰退しました。
老いた落ちぶれた王様は死ぬ前に、従者に言いました。
『王子と同じ墓はいかん、やめてくれ。』
王子の墓標にはひかりの国の「文字」が彫られていたのです。
『王子の墓が見える丘の中腹に私を埋めてくれ。頼む。どこでもいい、遺言じゃ。』
王国はますます、衰退して歴史から姿を消してしまいましたとさ。

おしまい


うおー
俺、筆力無いなぁ(笑)
だが、メルヘン童話が描きたかったのではありません。
王子の「文字」を「音源のファイル化、データ化(無償化)」
王様の「言葉」を「音楽業界」
に置き換えて、何かを言いたかったのですが、ちっとも旨く言えてねー・・・

不甲斐ない、呑みすぎたようだ。
余もこれまでか。
だれか聡明なこの世の救世主たる人よ。
後生だ、あとを頼む、ぐふっ(笑)